破滅の戦記 — 記憶の重み

無料短編小説を読んで、新しいウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマーの陣営についてより詳しく学ぼう!

ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー カザライト・ホールド

ヘルガーはしゃがみ込み、石に耳を傾ける。石は振動し、彼女に答えた。

「スリン、トロゴスは西の通路にいる」ヘルガーは砂埃を払いながら立ち上がり、そう言った。彼女の頭上には、カラク・ヴィグの境界を示す一点の曇りもない石造りの門が聳え立つ。その奥には坑道が広がり、微かな光を放っている。弧を描いた先には、砦へと通じる完成半ばの門があった。「予想通りだとは思うけど、向かってきてる」

「奴らがここに辿り着くまで、あとどのくらいだ」スリン・ビャルキは、大柄なドゥアーディンだ。彼は、洞穴熊の毛皮を身に纏い、光沢のあるグロムリルと、多様な氏族とギルドの装飾品を身に付けている。その姿は、まるで創造主みずからの手によって形作られたカザライト文化の記念碑のようである。表情と目つきは険しいものであるが、どこか温かみを感じられる。ヘルガーは、自身の両手から砂埃を払いながら、不躾にならない程度に肩をすくめ、目の前に続く闇に満ちた通路を一瞥した。

「白髭の運があったとしても、間もなくかな。特に奴らの中に親玉がいる場合は……。ヴァーグリン王と彼の増援部隊が到着する前にはここに辿り着いている可能性が高い」

「我が苛立ちを焼き払うだけの余地はまだあるぞ、一杯やりつつな!」突如響き渡ったその声は、活気に溢れ、内なる情熱で輝いていた。ヘルガーとビャルキは振り返り、竜の革と黄金に身を包んだ豪快なモヒカン頭の戦士を見やった。背後の砦の入り口に集まったドゥアーディンの群れの方から近付いてくる。

どの戦争評議会や暗誦でも、しかめっ面をしていたことを考えると、その戦士——ヴォルナは今、満面の笑みを浮かべているようだ。顔に傷のついたアーグマ=グリムニルの娘、そしてファイアスレイヤーにしては、滅多に見せることのない表情である。戦闘意欲を剥き出しにしているヴォルナだが、その分厚い手には、泡立つマグモルト・エールが三つ握られている。ドゥアーディンが持参した、エールの樽から注いだものだ。

ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー カザライト・ホールド

「我らが尊敬すべき石工、君にも一杯やろう」エールを豪快に飲み干し、手の甲で口を拭いながら、そのファイアスレイヤーはヘルガーに泡立ったエールのジョッキを押しやった。

「ルーンドーター、私は石工じゃないよ」ヘルガーはエールを受け取ったが、その声は素っ気なかった。「あなたと同じ、他ならぬ戦士。私の一族も、代々みなそうだった。私はただ……石の声が聞こえるのだ」

「私も石の声を聞くことができる。石が私に何を語ってくるか分かるかい?」ヴォルナの瞳に、熾火のような光が一瞬煌めいた。「死さ。悪事を働かせる奴らを正すことについて語ってくる。その喉と腑を掻っ切り、トロゴスの血で私を浄化するように、とな。そうだろう? 復讐が何たるか知っているだろう?」

「ああ」首に着けていたペンダントに触れながら、ヘルガーはそっけなく言った。精巧にルーンが彫られたこのペンダントは、彼女の父が身につけていたものだ。無惨に砕かれた父の亡骸から、このペンダントを拾い上げてからというもの、彼女はそれに幾度となく手を当てていた。「知ってるよ」

「どちらもいい加減にしないか。重要なのは、カラクを守ることだ」ビャルキはエールを飲み干し、自身の鉄鎚で坑道の先を示した。そこには、カザライトによる再建の努力が垣間見える柱と建設途中の拱道がある。「敵に対する我々の怒りは、グリムニルが抱いているだろう」

「自分の任務にだけ集中していればいいんだ、スリン。私たちは燃ゆる狂戦士の遺産を気にかけることにしよう」荒々しくしわがれた笑い声をあげたヴォルナは、スリンの言葉への返答としてジョッキを高く上げた。間もなくして、彼女は竜の外套をなびかせながら踵を返し、群衆の東端にいる、自身の赤々とした同胞とうなり声をあげるドロスの獣の配置場所へと帰って行った。

「変わり者だな、グリムドロンのスレイヤーたちは。」ヴォルナが去ってから、ヘルガーはそう言って首を振った。

「あの者たちも同じことを言っているだろう。これほどまで簡単にお前が餌に釣られるとは、とな。熱心なのは認めるが、我々が何のために戦っているのかを見失うでない」

「記憶は力だ。これまでのことに尊敬の念を持つことで、新たなものを作り出せる」

「ワシの言葉をそのまま突きつけてくるのか?」ビャルキは笑い、首を振る。髭が揺れ、氏族のトーテムがぶつかり合う音が聞こえる。「姪よ。我々が若かりし頃、お前の父もそうだったが、知恵は学んでいた。我々は、憎悪を駆り立てるためだけに、そのような感情を記憶することはない。何が危機にさらされているのか、それを思い出すために覚えておくものだ」

「承知しています、叔父上」とヘルガーは不満そうに答えた。頭は下げていたが、完全に反省しているわけではなかった。「でも、父を私たちから奪ったのは、あの類の獣だったんだ。いくらか宿怨を持つのも許されていいんじゃないかな」

「宿怨か。だが、宿怨は役立たせる必要がある。放っておけば沼に嵌ってしまうだろう」ビャルキの声が突然険しくなった。彼がため息をつき、ヘルガーの肩を叩くのも時間の問題だ。 

「さあ、行きなさい。お母さんに会ったら、よろしく伝えといておくれ」

ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー カザライト・ホールド

ヘルガーは三つ編みを揺らしながら、一定の速度を保って走って行った。彼女は、会釈や挨拶を返しながら、戦闘態勢を整えているドゥアーディンの兵士たちを通り過ぎる。斧と鎚の氏族は、自身らの武器の職人技を見比べている。砲手は座りながら共鳴する象形文字を兵器に刻んでおり、ルーンライトは偉大なるオースキーパーの銃の秘術機構を最終確認していた。

この戦闘集団の間に、ゴーレムが聳え立つ。この戦士の構造物それぞれが重厚な存在感を放っている。両手持ちの鉄槌を装備しているガズルのゴーレムは一際目立つ。ドゥアーディンはそれらを囲むように群れになり、陰鬱な低い声で詠唱を行なっている。ヘルガーはかれらを通り過ぎ、黄金に輝く光の方へと向かった。ヴァラヤンのゴーレムとそれらに群がる盾の乙女たちが身につける、金色の装飾から放たれる光だ。

「叔父さんはどうしてた?」母であるイムノッドが炉の女神の騎士に与えられる装備を身につけている姿を見るのは、いまだに違和感がある。彼女はいつも厳格な表情をしており、鎖頭巾を着用して髪をまとめ上げていてもその印象は変わることがない。もしかすると、それだからこそ、ヴァラヤの神殿の守護者であるご婦人たちは彼女を頼ったのかもしれない。祖先の御意志だ、と彼女たちは言っていた。その召命が届いたのはヘルガーの父が埋葬される予定の数時間前であったが、それは仕方のないことであった。

「毅然としていたよ」ヘルガーは言った。「でも私が思っていたのはもっと……」

「炎のような熱意に溢れていると?」イムノッドはそう聞いて、眉をつり上げた。「どの戦いも、過去の戦いの残響。その響きを通して、私たちは戦ってきた者たちの武勇を思い出し、かれらを讃えるの」

「炉の保護者の言葉?」

「私自身の言葉よ!」イムノッドは笑ったが、すぐにその表情は硬くなり、背後の松明で照らされた通路を示した。「この門の向こうに、私たちの鍛冶場や炉、仲間がいる。あの獣たちは、それらすべてを破壊しにやって来る。鋼の意志と勇気があれば、奴らを撃退できるわ」

「みんな同じことを教えてくれるんだ」ヘルガーは頷いた。「でも私は、ソルグリムを称えながら怨念に駆られていたい」

通路の奥深くから、太く低い腹鳴が響き渡ってきた。群衆は一気に静まり返り、悪臭が漂い始める。戦士たちは各々を押しのけて配置につき、盾を構えた。イムノッドは持ち場である密集隊形を組んだ兵士の中へと姿を消し、ヘルガーは自身の部隊の配置場所に戻った。途端に誰かが声をあげた。

「トロゴスだ!」

ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー カザライト・ホールド

恐るべき集団が、拳と重い大槌を引きずり、地面に溝を刻みながら、暗闇からのそりのそりと姿を現した。その歩みが、次第に速度を増していた。砲手が放射のルーンを打ち付けると同時に、兵器からは壊滅的な砲撃が放たれ、カザライトの戦線からは閃光が走り、魔力のエネルギーが発する特有の匂いが漂ってきた。射撃手たちはその一斉射撃に加わり、敵の目と柔らかな肉体に弾丸を撃ち込む。ヴォルナの赤々と燃え上がるスレイヤーたちは、すでに攻撃を始めていた。この軍勢の右側面は敵の獣じみた肉体を燃え尽くしながら、トロゴスの群れに進撃している。その間、残りの戦士たちは、反響するゴングのごとく自身の武器を盾に打ち付けながら音を響かせ、足を踏み鳴らし、詠唱を始めた。

「アンガラズの炉から忌々しい獣を焼き払い、アヤダァに再び安寧をもたらしたヴァランクロム氏族よ! 我らはその武勇を忘れてはおらぬ!」

「グリムニルを讃え、トロゴスの王の群れに断固たる態度で臨んだハスガードの氏族たちよ!我らはその獰猛さを忘れてはおらぬ!」

「ガルガントの門衛を打ち破り、カラク・モグラムの氏族たちを救った防衛者たるヴァラヤよ!我らはその不屈なる精神を忘れてはおらぬ!」

「獣らの犠牲者たちも、忘れてはいない」ヘルガーは父の形見に触れ静かにつぶやいた。「その犠牲者たちの名の下に、私は百体討ち倒す」

多くのトロゴスがファイアスレイヤーと交戦している。金の象嵌が施された武器から火花が散っていた。ヘルガーは、ヴォルナのマグマドロスが後ろ足で立ち上がり、組みつく巨大な怪物に向けて、灼熱の炎を奔流のごとく吐き出すところを目にした。だが、残りの獣らは大地を震わす雪崩れのごとく押し寄せ、ドゥアーディンたちに凄まじい打撃を加えた。ドゥアーディンの最前線は、その勢いにより激しく吹き飛ばされたが、第二線は違った。ビャルキの部隊は唸り声をあげ歯を食いしばり、大地を踏み締めながら、渾身の力で敵を押し返している。反撃してくるかれらに対し、トロゴスらは、鈍感な獣であるにも関わらず負けじと唸り声をあげていた。この小さな者たちが簡単に怯まないことに困惑しているようだ。ドゥアーディンたちはこの獣らの腹部を切り裂き、あるいは動きを押さえ、その身体に穴を開けるほどの凄まじい火力を与えた。

イムノッドのヴァラヤンのヘンジたちも、かれらと共にいた。敵の怒りを自らに引き寄せつつ長いハルバードで肉体を貫き、引き裂いていく。不穏なうめき声が、近くの坑道の壁に反射したとき、ほかの予備部隊の戦士たちと共にいたヘルガーは、その混乱に飛び込もうと態勢を整えていた。苦悶の混じったその声は、警告のようだった。ヘルガーの背筋に悪寒が走る。

「奴らの長だ」ヘルガーは入り乱れる戦場に目を走らせたが、その姿は見当たらなかった。「インギルデの灯火よ、親玉はどこにいる?」

石が爆ぜ、凄まじい衝撃が走った。石材や岩が舞い、ヘルガーは足をすくわれ、吹き飛ばされた。それが命拾いとなった。同胞たちは不運にも叩き潰され、血糊の塊と化した。視界がかすむ中、何やら巨大なものが混乱の中を突き進む光景を目の当たりにし、彼女は悪態を漏らした。トロゴズの頭目の体表は絶え間なく蠢いている。闇深い地底に棲む生物がひしめき合い、かさかさと這いまわっているのだ。その手には棍棒が握られている。棍棒と言っても、半分になり、すり潰された巨大な祖先の像だ。

ウォーハンマー:エイジ・オヴ・シグマー カザライト・ホールド

ヘルガーは、このトロゴスが側面攻撃の一環として坑道の壁を突き破ったとは思えなかった。おそらく、単に異なる坑道に迷い込み、壁の裏側から詠唱の音が聞こえてきたからだろう。丸く黄色い瞳がヘルガーを見た。彼女は父の形見に触れ、それから憤怒の感情が湧き出てくることを願った。彼女の指に、彫刻されたルーン文字が当たった。このときになってようやく、その模様に気が付いた。

悲しみと宿怨に苛まれていたヘルガーは、これまでその模様をよく観察したことがなかった。彼女は、このペンダントをルーンの刻まれたある種の武器かと思っていたのだ。だが違っていた。これはガラズであった。“最愛の人”——そう書かれている。

ドゥアーディンの通路に沿って目を凝らしている獣は、今や光に引き寄せられながら、カザライトの再建した建造物に向かっている。荒廃した通路に立っている者は、ヘルガーの他にほとんどいない。彼女自身驚いたことに、このことに気付いたときには、彼女が抱えていた怨念は消えていた。

「お父さん、覚えているよ」ヘルガーはささやいた。「お父さんが何のために命を犠牲にしたのか……。私もそのために戦ったことを覚えていてほしい」

彼女は立ち上がり、敵に突撃しようと踏み込んだ。トロゴスは雄叫びをあげ、粗雑な棍棒を振り上げる。棍棒が振り下ろされた瞬間、ヘルガーの目の前は真っ暗になった。彼女は目をつぶっていたのだ。だが、そのあとに待ち受けているはずの永遠なる暗闇はやって来ない。その代わりに、武器が盾に当たった衝撃音が鳴り響いた。

ヴァラヤン・ゴーレムが、ヘルガーと蹂躙していた忌々しい巨体との間に立ちはだかっている。かれらの胸部に埋め込まれている根源鉱が、青く脈打つように輝いていた。格好の餌食を破壊できる機会を阻まれ、怒りが湧いたトロゴスは、ゴーレムに勢いよく突進した。ゴーレムの一体は武器を振るいながら倒れたが、残りの者たちは耐えた。激しい乱闘のさなか、イムノッドのヘンジが唱える深く低い詩歌が響き渡る。ゴーレムは盾で獣を打ち付け、その醜い鼻を引き裂いた。その内の一体はその耳を切り落としたが、敵による凄まじい一撃により、首を取られた。

回転する石の破片がヘルガーの頬を裂き、彼女は身をすくめた。助けに入ったゴーレムは、すっかり破壊されてしまった。だが、これにより数秒稼ぐことができた——極めて重要な、張り詰めた秒数。それは、角笛が吹かれ、援軍が押し寄せるに十分な時間であった。松明で照らされた柔らかい光がこちらへ向かってくる。詠唱の反響に合わせて、足を踏み鳴らし盾を鳴らす。今度は、山全体をも揺るがすほどの勢いで。

ゴーレムが攻撃を与えたにも関わらず、トロゴスは振り返り、眉をひそめた。その瞬間、槍の形をした六角形の岩が大地から勢いよく飛び出し、鉱石圧縮ピストンのごとく、その腹部を貫いた。それと同程度の大きさのものが、波打つ岩の奔流とともに突撃する。獣はうなり声をあげながら放心状態に陥った。今や複数のゴーレムがあたりを囲んでいる。ヘルガーは援護に回った。前進するヴァーグリン王の玉座がトロゴスに突進し、彼は破壊的な斧の一振りでトロゴスの喉を掻っ切った。

戦士たちが道を開け、彼は乱闘に乗り込む。そこでは、ヴァーグリンの石工の詠唱に合わせて、トロゴスの入り口に横たわっていた崩壊した岩がうねり、筒状になった大きな波を描いている。ヴァーグリンの艦船の船首に付いた竜の首から稲妻が走り、オースキーパーの轟音轟く弾幕砲火に火力を加えた。彼の後ろからは、新たな氏族の戦士たちが進軍してくる。かれらが掲げる戦旗は、砦の印章で光り輝いていた。ヴォルナの同胞の何人かもその中にいた。覚醒と漆黒を象徴するいにしえの歌を歌うにつれ、溶岩の秘めたる力が、かれらの筋肉を縫うように広まっていく。

トロゴスは引き際を予測するのに十分な知能を持ち合わせてはいなかった。徐々にドゥアーディンがトロゴスらを圧倒する。かれらの勢いは衰えることはなかった。イムノッドが倒れた敵に乗り、その大きく開いた口を突き刺したところをヘルガーは見た。イムノッドは、怪我を負った氏族の戦士のため自ら盾となっていたのだ。その表情は断固としている。ヘルガーはやっと落ち着きを取り戻し、乱れた荒い息を吐き出した。動悸がおさまりつつあるなか、彼女は座り込んだ。その片手は、まだお守りを握っている。

「お父さん、敵の一体も倒せなかった。一体すら、倒せていない……」そう言いながら、ヘルガーは笑みを浮かべた。彼女はゴーレムの足にもたれかかった。この石造の戦士は今、従順に静止した石像へと戻っている。彼女は今一度通路を見た。松明が明るく燃えている。柱に損傷はない。ドゥアーディンの技巧は健在だ。技巧あるところに命あり。これは少なくとも、石が彼女に教えてくれたことだ。

「でも、思い出したよ。復讐がすべてではないこと。私たちが生きるのは、殺すためではなく、創造するためであるということ。ここから始めるのがいいのでしょう、たぶん」

新しいアーミーセットの予約が開始された今、カザライト・ホールドは、失われし王国を奪還するべく戦場へと足を運ぶ。ファイアスレイヤーの無料小説も読みながら、クロムドロンとともにグリムドロンを解き放つ準備を整えよう。

ウォーハンマーの日本語公式ニュースレターに登録して、最新情報やイベント情報をいち早くチェック! 登録はこちらから

この記事をシェアする

Read More

この記事のほかにも、こんな記事があります。