決死軍の伝承 — 惑星クリーグがなぜ人間を捧げる工場と化したのか

クリーグ決死軍(デスコーア)は、防衛軍の中でも強い意志を持つとして名高い。だが一方で、惑星全土が決死の兵士たちを100万人単位で戦場へ派遣することとなった悲劇の全容について、〈帝国〉の多くの者たちは知らない。ましてや、クリーグが元よりそういった惑星ではなかったということは知る由もない。そのため、交易拠点として栄えていたこの惑星が、汚染され閑散とした荒地へと化した事象は大半の者にとって謎であり、噂程度のものである。

交易により、自身の富が増し怠惰に陥ったクリーグの指揮官と商人は、効率的な規則性をもって租税を収集する帝国兵務局の担当官吏諸官らに対して恨みを抱きはじめていた。最終的に、惑星最大の多層都市を有する上位貴族院は、惑星規模の戒厳令施行と〈帝国〉からの分離独立を宣言し、結果、何十億もの反逆民兵が、忠誠派の守備部隊が属する多層都市を次々と陥落させ、クリーグの恐るべき軌道防衛網は見せかけだけのものとなっていった。

全員が反逆した訳ではなかったが、戦いのわずか数ヶ月後、忠誠派の残留兵が残る都市は多層都市フェログラードの一つだけとなった。そこで、クリーグ第八三帝国防衛軍連隊のジャーテン大佐が、裏切り者の指揮官らの処刑を断行し、忠誠派のための安全な安息所として都市を強化した。 だが、数百万人もの難民を受け入れてもなお、数十億人もの反逆者らには極めて劣勢であった。

他の選択肢も、軌道砲にあえて近づくための支援艦隊もなかったため、忠実なる同盟者たる技術賢人グリールの協力を得て、ジャーテンは禁断の兵器が保管されている巨大な貯蔵施設へと潜り込んだ。クリーグを皇帝へ返却できない場合、敵の手に渡らないよう阻止することを決意していた彼らは、皇帝即位祭時に致死的な放射性ミサイルの弾幕を上空成層圏へ浴びせた。それから間もなくして、惑星全体は致命的なアイソトープに包まれた。

複数の多層都市に有害な風が吹き渡り、燃え盛る炎が太陽の暖かさを遮断している中、放射線嵐が戦傷を受けた景観を破壊した。フェログラードで日が沈み始めるまでに、クリーグの生物圏は完全に崩壊したのだ。忠誠派の守備部隊の戦力は優勢に傾いていたが、勝利を掴むまでの道のりは容易ではなかった。最後の反逆者が地上から抹殺されたのは、500年を超える年月にわたり繰り広げられた、厳しい消耗戦の末であった。

厚手の外套を羽織り、ガスマスクを着用した歩兵の連隊が、放射線を浴びた塹壕の中を掘り進み、爆弾穴が残る有棘鉄線の一帯と複数の不発弾を乗り越え、多くの残忍な駆除作業を行った。それに伴う大量の犠牲者の数と、こうした強い自己犠牲の精神から、このユニットは“決死軍”と呼ばれるようになり、帝国防衛軍(アストラ・ミリタルム)へ形式上再編入した時でさえ、その呼称は変わることもなかった。

40千年紀末期、クリーグはついに〈帝国〉の支配下へと戻ったが、その努力と引き換えに与えられたものは長い間滞納していた惑星租税に関する通知であった。帝国兵務局は、滞納していた惑星租税として、ただちにクリーグに資源の供出を要求したのである。それはこの惑星が産み出した新たな資源、すなわち帝国防衛軍に編入するための、新編成の一個連隊であった。だが驚くべきことに、兵務局に納められた租税は一個どころか、完全装備の二十個もの連隊であった。その全兵は訓練を積み戦争に挑む準備ができていた上、銀河で最も過酷で危険な戦争地帯に派遣されることを命じられていたのだ。

〈帝国〉の戦争兵器となる兵士たちを絶えず生み出さねばらないという重圧が惑星クリーグにのしかかるが、それは決して弱まることはない。だが、先祖の異端行為を贖おうとする強い願望から、クリーグの住民はあらゆる悲劇に耐えるのだ。戦えない者たちは武器や装甲を生産する地下工場で骨折り働いており、そこで反逆行為があった前例はない。なにしろ、パワーパックや塹壕用棍棒を生産するほど、クリーグの償いの犠牲となる〈帝国〉の敵の数も増やすことができるからだ。

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